初心者向けCFRPの引張試験の基本チェック項目

CFRP特に、プリプレグで成形した一方向材の、0度引張試験について解説します。有名な試験方法としては、

  • ASTM D3039
  • JIS K7161

などがあり、詳細な試験方法・試験条件については、これらの規格を参考にしていただくことが良いです。ここでは、これらの試験規格にも記載があるかもしれませんが、ないかもしれない、引張試験をスムーズにこなすためのコツを記載していきたいと思います。

  • ロードセルの耐荷重の確認
  • グリップの確認
  • リミッター設置
  • 保護カバー

ロードセルの耐荷重の確認

まずは、試験環境から確認です。通常引張試験をするマシンというのは各施設で決まっていると思いますが、ロードセルが変更されている可能性がなきにしもあらず、ですので、まずは試験機が引張試験で破断強度を図れる程度の荷重レンジをそなえているか確認します。

また、引張試験でどの程度の荷重が必要かを予め推定しておくと良いと思います。推定破断荷重は、過去の試験結果や、計算によって導きだしておいてください。だいたいこのくらいで壊れるはず、というのを知っておくと、引張試験が正常に行われているかどうかの判断基準にもなります。

ロードセルというものは多少過負荷がかかっても耐えられるようにできているはずですが、高価なものなので、避けられるリスクは避けておき、マシンが損傷しないように気を付けてください。

逆に、小さい荷重の試験をするのに、耐荷重の大きなロードセルを付けてしまうと、試験制度が悪くなります。最近のロードセルは分解能が高いのかもしれませんが、ロードセルの耐荷重の20-50%程度で破断することが理想的です。

グリップの確認

最近は、どのようなグリップが流行りなのでしょうか。エアチャック、油圧チャック、手動のウェッジなど、色々とあると思います。大事なのは、荷重がかかるにつれ、グリップがきつくなるようになっているかだと思います。

通常のウェッジ型のものであれば、そのようになっているはずですが、定期的にウェッジを取り外して、掃除をして、グリスを塗るなどしないと、詰まったゴミや、試験片の残骸の影響で、うまく機能しないときがあります。

そのような場合、引張試験中に試験片が滑り、荷重が増えない現象が発生します。メーカーによって推奨される掃除方法は異なるかもしれませんので、それぞれのグリップに合った掃除をするようにしてください。

リミッター設置

リミッターには、装置の機械的リミッターと、ソフトウェアのリミッターがあります。どちらも、ロードセルへの過負荷を防止するためにあります。

機械的リミッターは、治具同士が接触しない位置に設置し、万一操作を間違えて、急にクロスヘッドが上下しても、治具同士がぶつからないようにするために必要です。

ソフトウェアのリミッターは、荷重で制御するのが普通だと思いますが、想定される破断荷重よりは高く、ロードセルの耐荷重の90%よりも低く設定することをお勧めします。

保護カバー設置

CFRPで、特に0度方向を含む試験の場合、破断と同時に試験片が吹き飛ぶことがあります。試験片の周りに、保護カバーをしておくことで、周辺への試験片の飛散を防いだり、破断後の試験片の回収にも役立ちます。

もし設備があるのであれば、環境槽の中で試験をしてもよいと思います。しかし、試験片の様子がよく見えなくなるので、専用の透明な保護カバーを作製することをお勧めします。

数トンレベルの荷重が一気に解放されることになるので、初めての場合、音にもびっくりします。試験片を間近で見ないように気を付けてください。

最後に

読み返してみると、特にCFRPに限定しなくても通じるようにも思いましたが、あくまでのCFRP引張試験で得た知見として書いたのでそのままにしておきます。引張試験は力学試験の基礎中の基礎ですので、ポイントを押さえて安全に、装置を壊すことなく進めるように心がけてください。

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