CFRP試験片の観察方法について

CFRPの材料開発を行う際、力学試験は必須です。力学試験は、目標の強度、弾性率を得ることが重要ですが、値だけを見て、同一性や大小の比較を議論するのは危険です。複合材料は想定される破壊モードで破壊しているかを確認することが重要です。同じ値が出力されても、現象が異なる場合、正しい方向で開発が進められていない可能性があります。

今回は、CFRPの力学試験を行った後に、破壊モードを確認するための基本的な観察手順について記載します。

目視確認

まずは目視確認です。

引張試験や圧縮試験の場合、タブで壊れていないかを確認してください。タブ内部、タブの端などで損傷している場合、強度は弱くなります。どんなに精度よくタブを接着していても、一定数はタブで破壊してしまいますので、十分にN数をとるようにしてください。

続いて、破面の様子を確認してください。引張、圧縮、曲げで理想的な破壊モードがあるはずで、試験規格にも説明があると思います。例として、プリプレグの力学試験を挙げておきます。

0度引張試験の場合で、破断面が真っ直ぐの場合は、タブもしくはグリップの滑りの衝撃波で圧縮破壊している可能性があります。

0度圧縮試験の場合は、斜め45度方向への滑り、もしくは中央から膨張して破壊です。

研磨し、マイクロスコープで確認

研磨し、マイクロスコープでの観察は、き裂がどこを通っているかや、試験片の品質確認に有効です。マイクロスコープというのは、デジタルマイクロスコープのことで、KEYENCEのVHXシリーズが有名です。

き裂のルートの確認する際は、プリプレグの積層体の場合、損傷が含まれる層の繊維方向に対し、直角に切り出して研磨します。そして、できる限り拡大し、樹脂中を通っているか、繊維と樹脂の界面を通っているかの確認までできれることが好ましいです。

試験片の品質確認としては、ボイド、繊維分布の均質性を見ておくとよいと思います。特に繊維分布が非均質な場合、繊維が密な箇所で含侵不良が生じていたり、高い応力集中が生じてしまうため、強度は低下します。その場合は試験片を作り直すことをお勧めします。場合によってはプリプレグなど元の基材も作り直す必要があります。

ちなみに最近のマイクロスコープはほぼ自動で拡大画像をつなげて大きな画像にしてくれるので非常に便利ですね。やや高価ですが、観察には必須なアイテムなので、お持ちでない場合、購入を検討されてはと思います。

また、研磨の精度も重要です。より細かい箇所を見たい場合に、研磨の傷とボイドの区別がつかないと、観察のしようがありません。研磨のマシンもスピード、回転方向、圧力などを調節してくれるプログラムが充実してきてはいますが、いまだに熟練した技術が必要だと感じています。この研磨作業が一瞬で終わるようなマシンをいつか開発してみたいです。

SEM観察

SEMは繊維と樹脂の接着性を確認するために有効な観察方法です。観察できる領域はごくわずかなので、一枚の写真が全てを代表する結果とは言えないのが苦いところですが、傾向はつかめるはずです。金を破面表面にスパッタリングすることで、より鮮明に繊維表面の様子を見ることができます。

また、繊維表面だけでなく、樹脂の含侵具合き裂の進展方向き裂の起点樹脂の伸び繊維破断部の様子なども確認できます。これらは、樹脂が損傷した、界面が損傷した、などの議論をするための根拠になります。

例として、き裂の起点は試験片の表面である可能性が高く、表面付近に異物などが入っており、そこから雷のような筋が見えたら、それがき裂の起点と言えます。

また、繊維破断については、繊維軸方向に垂直な破面であれば引張、欠けている場合は圧縮というのが定説です。

最後に

試験片は貴重なものです。一度壊してしまえば元にはもどらないですし、観察のために切ってしまっても元にはもどりません。丁寧に試験片を作製し、力学試験後の試験片からできるだけ多く情報をとれるように心がけることが大切です。

また、力学試験を始める前に予め、何を観察する必要があるかリストアップしておきましょう。そうすることで、新たに必要なテスト水準も見えてくるかもしれません。

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