製造方法

PAN系炭素繊維の製造方法

炭素繊維にはPAN系とPITCH系のものがあります。
ここではPAN系の炭素繊維の製造方法について紹介します。

大きな流れは、図の通りです。順番に説明します。

PAN繊維製造

原糸や、プリカーサー繊維とも呼ばれます。
PANポリマーをシャワーヘッドのような数千個孔の空いた口金で押し出して、引き取ることで、3Kや4K単位の元となる繊維状のポリマーとなります。ここでの口金に何個孔が開いているかで、製造できるフィラメント数の炭素繊維が制限されます。
その後、高温で延伸し、PAN繊維とします。

耐炎化

PAN繊維を200~300℃程度の炉内を通過させて、PAN分子が環構造に変化させます。ここで得られる繊維は耐炎糸と呼び、次の炭素化での高温プロセスに耐えられる糸となっています。

炭素化

耐炎糸を不活性ガス中で、さらに1000~2000℃で蒸して炭化します。最近ではマイクロウェーブを用いた方法なども検討されています。
このプロセスで、炭素繊維の基本構造は完成し、強度や弾性率が決定します。
さらに高弾性率の炭素繊維を製造する場合は、炭素化の後に黒鉛化というプロセスもありますが、ここでは省略します。

表面処理、サイジング処理

炭素繊維の表面特性を調整します。
酸性またはアルカリ性の電解質の中で、電解処理を行うことで、炭素繊維表面に出る官能基(つまりはO原糸)の量を調整します。
一般的には、電解処理レベルが大きいほど官能基が増え、樹脂との接着性が上がるといわれています。
電解処理の後、サイジング剤の入ったバスを通過させて、炭素繊維にサイジング剤を付与します。

巻き取り

サイジング剤が付与された炭素繊維を乾燥させ、ワインダーによってチューブへ巻き取ります。

ワインダーは例えばこちらのようなメーカーで製造されています。

Winders Archives - Izumi International
TMT神津株式会社 | TMT KAMITSU | TMT神津について

炭素繊維製造工程はノウハウの塊

以上、一般的に知られている炭素繊維の製造方法について説明しましたが、実際は細かいノウハウが至る所に存在します。炭素繊維製造技術は日本発祥であり、日本で育てられてきたものです。今後も日本で世界最高水準の技術を開発・維持されることを期待しています。

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