炭素繊維の使用方法

炭素繊維は糸道を経て製品となる

炭素繊維は、目的の製品を生み出すために、ボビンから引き出して、糸道を作製して使用します。この糸道次第で、製品の質が決まると言ってよいでしょう。

例えば、プリプレグであれば、数10本の繊維を並べて目標の厚さ、糸幅にしたあと含侵工程が存在します。糸道の工夫によって、糸を精度よく平行に並べる、数10本の糸幅をコントロールするといったことが可能になります。

以下が最低限必要な糸道に関する装置です。

炭素繊維の巻き出し装置:クリール

炭素繊維ボビンはクリールへセットし、炭素繊維を引き出していきます。チューブを取り外して内側から繊維を引き出していくインサイドプルというタイプもありますが、ねじれが生じやすいため、連続繊維として炭素繊維を使う場合は、推奨しません。

クリールの種類は、プリプレグ用、フィラメントワインディング用、織物用など、様々なタイプが存在します。用途に応じてクリールを設計していくことが重要です。

トラバースガイド

炭素繊維をボビンから引き出すとき、炭素繊維はボビンの幅を往復します。つまり、炭素繊維の位置を制御するためには、ボビンと炭素繊維の始めの接触点を遠くするか、引き出された炭素繊維がある箇所を必ず通るようにさせることが必要です。

前者は場所が確保できたらよいのですが、通常は後者で、炭素繊維の位置制御のためのトラバースガイドを用います。トラバースガイドというのは炭素繊維限定の用語ではなく、繊維業界の一般的な用語です(クリールもです)。よく使われるのが、セラミック製のアイレットガイドや、コームガイド(くしガイド)です。

どのような糸道が必要かは、目的の製品やその品質のターゲットにより異なります。炭素繊維のカタログ通りの性能が発揮できていない場合は、糸道に問題がある可能性があります。そのような場合は、炭素繊維メーカーに問い合わせてみることをおすすめします。

毛羽、張力、ねじれに注意

糸道の基本的なチェックポイントは

  • 毛羽
  • 張力
  • ねじれ

です。この中でもとくに、”ねじれを抑制すること”が最重要項目だと、私は考えています。理由は

  • 糸幅が狭くなり、幅が拡がりにくくなる(厚みは大きくなる)
  • 樹脂が含侵しにくく、未含侵領域となる
  • バーとの接触面積が減り、適切な張力を与えられなくなる
  • 概観を損なう

などです。
炭素繊維を使用する際は、糸道を作製することが不可欠です。糸本来の性能を引き出すために、糸にやさしい糸道を作製しましょう。

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