熱硬化性樹脂プリプレグのプレス成型時の注意点について

CFRPの主要な成形方法に挙げられる、プレス成型について説明します。ここでは、熱硬化性樹脂のプリプレグを想定していますが、SMCや熱可塑性樹脂プリプレグのプレス成型にも共通する項目はあると思います。私が考える熱硬化性樹脂プリプレグのプレス成型のメリット、デメリットは以下の通り。

メリット

  • オートクレーブよりも早く成形できる。
  • 高い圧力を与え、凹凸のあるものを成形できる。

デメリット

  • よりよいものを作ろうと思ったら、型がとてつもなく高価
  • 欠陥のないものを作るためには、精度良いプレス条件コントロールが必要
  • バリが出る
  • 精密なカットパターンが必要

並べてみるとデメリットの方が多いような気がしましたが、プリプレグを活用して薄くて軽い製品を量産したいときには適した製法だと考えています。以下、注意点を記載します。

注意点1:型の清掃

まず、型が汚れていないか注意してください。型の汚れは、

  • 転写して成形品の外観を損ねる
  • 摩擦が大きくなり、シワなどが入る。
  • 脱型しにくくなる

などを引き起こします。まずは型をピカピカに磨き、離型処理をすることをお勧めします。プレス成型直後も、樹脂のバリや、型内部に異物が残っていないか確認しておきましょう。

注意点2:温度コントロール

温度コントロールは非常に重要です。樹脂粘度が十分低い温度領域を狙うことが基本になります。プレス機に付属の温度計を確認するのではなく、熱電対を用いて実測してみたほうが好ましいです。

型が大きい場合は、型の右端、中央、左端といった複数個所に熱線が通っていると思いますが、それぞれの箇所で目標の温度になっているか、確認することが大事です。もし一か所でも温度が低い箇所があれば、樹脂粘度が十分に下がらず表面品位が悪化する場合があります。

注意点3:型を締めるタイミング

プレス成型をする歳、基材を置いた瞬間に型と同じ温度まで加熱されるわけではないので、余熱が必要です。余熱を何秒にするか、というのは樹脂種によって異なります。

また、基材を運ぶのが人間である場合、基材配置に手間取ると、基材を配置する時間がかかってしまい、ヨーイドンで時間を計測し始める時間がよくわからなくなってしまいます特に、速硬化系の樹脂を用いている場合、数秒の誤差で品位が大きく変わってきます。何度か練習してから、本番に臨むことが好ましいです。

注意点4:基材配置

基本的にプリプレグは繊維方向には伸びないので、複雑な形状のものを成形するためには、プリプレグを切り貼りして、凹凸で繊維が突っ張らないようにしなくてはなりません。織物プリプレグでも、一方向プリプレグでも同じことが言えます。

そのための事前準備が重要で、カットパターンのデザイン、積層方法を決めておく必要があります。積層してから型に配置するか、複数の基材を順番に型に配置するかは、ケースバイケースです。

SMCの話になりますが、SMCであっても基材の配置方法は非常に重要です。流れたSMC同士がぶつかる箇所(ウェルドライン)は基材が交わりにくく、強度、剛性ともに弱くなってしまいます。

最近では繊維方向にも伸ばすことのできるプリプレグもいくつか開発されていますが、それについては別で述べたいと思います。

注意点5:脱型時の繊維方向、温度

脱型するときは、繊維方向に注意してください。エアノックなどで、スポンと取り出せたらよいのですが、部分的に型に引っ付いていた場合、無理に取ろうとして90度曲げのように剛性の低い方向に曲げてしまうと、割れることがあります。

また、温度については、温度が高すぎた場合、硬化しているはずの温度でも基材が柔らかく、脱型により変形してしまう可能性があります。硬さを確認してから、脱型する必要があります。

最後に

今回はプリプレグのプレス成型の基本チェック項目について記載しました。プレス成型は非常にデリケートな成形方法で、わずかなズレで品位が大きくかわります。効率よく品位の良い成形品を得るために、基本チェック項目を忘れないように心がけてください。