CFRP試験片を正しく分析したい方へ
主に、UDプリプレグの、例えば、0TS、OHT、ILSS、、、などなどのいわゆるクーポン試験片の話です。出てきたデータの妥当性は検証していますでしょうか?
これらの試験が正しく行われているかどうか、試験結果を正しく理解できているかどうかで、その後の運命が変わります。私の経験をもとに、確認項目について書いていきます。
代表的な確認項目
パネル成形時、試験片加工前
- 試験規格:ASTM、JISなど。
- 積層構成:対称積層になっているか
- 基準線:通常繊維方向を示すプリプレグの端。そこがずれないように丁寧に積層。
- 成形条件:温度、圧力など。
試験片加工後、力学試験前
- 推測物性:過去のデータ、理論値などから。試験結果が変な値かどうかの判定のため。
- 積層構成:切った端を見てください。白いラインがその端面に平行な繊維です。0度が真ん中、90度が真ん中、など確認できます。
- 繊維方向:判定は難しいですが、見えるところの繊維の角度が、基準線(試験片の端)を0度として正しい角度になっているかどうか。
- 試験片の厚み:厚みのばらつきが大きかったり、切り出した順に徐々に薄くなっているか、など確認してください。理論厚みも計算できるはずです。
力学試験後
- 破壊モード:試験によって様々な破壊モードがあります。基本的には、引張なら引張で破壊できているか、といったように、狙った破壊が行われているかどうか、まず確認。
- 荷重変位曲線:行った各試験が平行な荷重曲線になっているか、変なノイズが入っていないか。
- 繊維方向:破壊後の試験片は意外と繊維方向が見えます。特に、0度方向が試験片の端に対して平行かどうか確認してください。
- 値の計算:計算式を確認してください。計算ミスがあると、何もかも台無しです。
以上、ザッと思い当てる項目を列挙してみました。個別試験方法の細かいことを言えばもっと大量の確認項目があるはずです。
データのまとめ方
出てきたデータは、平均値として見せることがほとんどのケースでしょう。しかし、平均値で議論することは危険です。かといって、標準偏差、変動係数を見ればいいかというと、そうでもありません。一番大事なのは、狙い通りの試験できているかどうかを確認することです。そのうえで、その平均、ばらつきが妥当なものかを議論しなければなりません。
でないと、何か力学特性が悪い場合に、炭素繊維メーカーであれば、焼成温度変えてみる、プリプレグメーカーでは、プリプレグ製造時の張力を変えてみる、など、根本解決とはほど遠い対策をすることになりかねません。まずは、力学試験のやり方、試験片の質など、直せるところから確認しましょう。
おすすめは、
この4点をセットでまとめるて、データベースとして蓄積しておくと、データ分析と、今後何かがあったときに、参考にしやすいです。平均値だけあっても、そのデータの意味を理解するのは困難です。同じ値であっても、破壊モードが異なっていたり、試験が正しくできていない状態であれば、モノは同一ではありません。
最後に
CFRPを使った製品は増えてきています。CFRPの力学試験を実施したことのある人も多いでしょう。しかし、出てきた値がどのような条件で出てきたものか、判定できる人は少ないと思います。データと実物をよく見て、データの妥当性を確認できる能力を養ってください。
コメント